汚れなき抱擁

美男子のアントニオはローマ遊学から帰り、親の薦めるままに公証人の娘バルバラとの結婚を決めた。ドン・ファンの彼は真実の恋を模索していたが、天使のように可憐な彼女にこそそれを見つけ得たのである。けれど、挙式から一年近く経っても、バルバラは生娘のままで、小さな町はその噂で持ちきりになる。“アントニオは不能”との評判に、精力家の元連邦官の父はこれ見よがしに売春宿に通ってみせ、結局は腹上死してしまう。そんな父親の影響下に育ったアントニオは、淫売には拒絶反応が出て、逆に、会う素人女すべてを愛おしく思った--と、友人に昔を回想する。それが何時の間にか、本心から好きな女には“穢したくない”という気持ちが強く働いて、手出しのできない体質になっていた。バルバラは破局の後、すぐに大資産家の公爵のもとに嫁いだ。そして、アントニオが若い女中のサントゥツァに“お手つき”をしていたことが、彼女の妊娠で分かった。彼が不能でないと証明でき、母は大喜びで彼らの結婚をふれまわったが、アントニオは物憂げに沈んで、堪え切れず涙を一筋流すのだった。

ShareSNSでシェアしよう!

TOP