監督･ばんざい!

映画監督キタノ･タケシは、次回作品に悩んでいた。最も得意とするのはギャング映画。だが「暴力映画は二度と撮らない！」と宣言してしまったのだ。そこで、ヒット作を作ろうと様々なジャンルに挑戦することにした。小津安二郎風人情劇、昭和30年代映画、ホラー映画、ラブ･ストーリー、時代劇、SFスペクタクル。どれもこれも気に入らず中断してしまう。お先真っ暗、追い詰められたキタノ･タケシ監督。ところが、映画を愛する全人類に向けて、と閃いた。セコくてドジなサギ師の物語。サギ師である母とその娘が、政財界の大物･東大泉のご子息らしき男に目を付け、結婚詐欺を働くのだ。ところが、この男は東大泉に30年以上遣える生真面目な秘書、吉祥寺太だった。しかも貧乏な家の小倅だったのだ。この話の先は、予測不可能な展開が待っていた。人類史上かつてない大異変が起きようとしていたのだ。