戦場のアリア

1914年、第1次世界大戦下。フランス北部の最前線でフランス、スコットランド連合軍はわずかの距離をはさんでドイツ軍と対峙していた。やがてクリスマスがやってきたが、家族と一緒に過ごしたいという兵士たちの願いもむなしく、こう着状態にある戦況は一触即発の危機を孕みながら、彼らを縛り付けているばかりだった。そんな中で、ドイツ軍にひとりにテノール歌手が召集された兵士として加わっていた。彼は面会に来たソプラノ歌手の妻とともに、せめてものクリスマスの慰めと、自軍兵士の前で歌いだす。戦場にかすかに流れる歌声に、スコットランド軍から、バグパイプの音が響いてきた。やがてフランス軍からも大きな拍手が。そしてついに二人は無防備のまま身を晒し、さらに歌い続ける。殺伐とした戦場に流れるアヴェ・マリア。歌声に誘われるように次々と塹壕から出てくる兵士たち。そこにはこれまでの憎しみや敵対心をしばし忘れて、人間として本当に純粋にクリスマスを祝おうという気持ちがあふれていた。ほんの束の間の休戦、また明日からは命をやり取りしなければならないと分かっていても。史実にもとずく奇跡のクリスマス休戦はこうして始まった。

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