愛についてのキンゼイ・レポート

1948年、アメリカで一冊の学術書が発行された。後にキンゼイ・レポートとして知られるようになるこの本は、学術書としては驚異的な売上を示し、全米にセンセーションを巻き起こす。その内容は、インディアナ大助教授のキンゼイ博士による1万8000人もの人々に、彼らのセックスライフをインタビューしてまとめあげたものだった。今から5.0年以上も昔、セックスは、決して人前で話したり、話題にしてはいけないものだった。セックスについての情報が、今ほどあふれかえっているような世の中ではなく、それは秘められるべきことがらだった。そんな中でのセックスレポートに、人々が大いな興味を示したのも当然だろう。そして5年後、キンゼイ博士は同レポート女性版を刊行する。しかし、まだ女性の性の解放を認めるほど開かれてはいなかった社会の、激しいバッシングの中で、キンゼイは失意の日々を送ることになる。 この映画は、そんなキンゼイ博士の、まじめで真摯な性への探究心を、まじめに真摯に映像化した、まじめな作品。ある程度の年配の人なら、キンゼイと聞いてニヤリとする人もいるかもしれない。しかし、それはキンゼイに対して失礼な態度だろう。性こそ人間のすべての営みの中で最も大切で、最も必要なものなのだから。ただ、社会に受け入れられるには、彼の研究は、数十年早すぎたのかもしれない。天才の行為に、世間が追いつくには、やはり多くの時間が必要なのだろう。しかし、今の世の中をキンゼイが見たら、いったいどう思うだろうか。

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