ハンガリーの動乱を避けて、西欧へ向かう最後の航行便は、ブダベスト空港を発てなかった。英人の報道記者ヒューや米人の技師夫妻や日本人の旅行者など14人の一行は軍用バスで国境へ向かうことになった。その中の、フレミングという男とアシュモア夫人の1組は一見、夫婦のように見えたがなんとなく秘密の匂いがした。旅がつづくうち、一行はこの2人に注目させられ、不安になった。もし、この中に動乱と関係のある者がいると、バスはブダベストに送り戻されるかもしれない。やっと、国境の町についた。が、国境警備隊は本部からの越境許可がないと、一行を降し、ジペイジの旅館で待機しろと命じた。警備隊の隊長はスーロフ少佐といった。彼は他のソ連将校と違って、ソ連の介入に疑問を持っていた。なぜなら、この国境では動乱勃発のニュースの詳細は不明だったから。彼はブダベストの状況を知りたがっていたので、一行を下車させたのだ。

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