ぼくの妻はシャルロット・ゲンズブール

イヴァンはケーブルテレビでスポーツ・ニュースの編集をしているスポーツ記者。妻と二人暮らしのごく平凡な男だ。ただひとつ、平凡でないのは妻が女優だということ。女優と一緒に暮らすのがどれだけ大変なことか。ディナーに繰り出すと、ファンからのサイン攻めに合うし、散歩を楽しんでいても、ファンに見つけられ写真をせがまれてしまう。しかしメリットもある。スピード違反で車を止められても、パトロール警官はシャルロットの微笑みひとつで大目に見てくれるし、満席の人気レストランも電話越しのシャルロットの甘い囁き声で簡単に予約が取れてしまう。明日撮影を控え、シャルロットはいつになく陽気だ。共演者が名うてのプレイボーイ、ジョンだからか。イヴァンは僕は嫉妬で狂いそうになる。撮影のためしばらく、パリとロンドンに離れての別居生活。イヴァンは心配でたまらない。週末を利用して、ロンドンにシャルロットを訪ねてみた。ホテルのスウィートで、僕たちは久しぶりに甘い愛のひとときを楽しんだ。年齢の離れたパイロットとスチュワーデスの恋物語を、シャルロットがスタジオで演じている間も、僕の脳裏をシャルロットのラヴシーンがよぎり、悩ませ続ける。思いあまって、スタジオの重い扉を開けた僕の目前に飛び込んできたのは、何と全裸姿のスタッフたち。そうして、その奥にはジョンとともに裸でベッドに横たわるシャルロットが! あまりの衝撃に、僕は気絶してしまった。必然性のないヌードシーンを、シャルロットが「みんなが脱げば、私も脱ぐわ」と拒否したのを真に受けた監督デヴィッドの指示の結果が全員ヌードだという。映画という仕事が判らない。そんな彼にシャルロットは、ただこう言うだけだ。「愛してる。でも、仕事は続けるわ」。

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