影なき声

(C)1958 日活
毎朝新聞の事件記者・石川汎はある日一人の婦人を見て首をかしげた。その婦人は三年前、社の交換手をしていた高橋朝子だった。彼女は小谷茂雄と結婚しているが、交換手時代ふとした事から殺人犯人の声を聞いてしまった。いまだにその不気味な声が耳について離れず、悩まされていた。彼女の夫・茂夫は小心者で、大東京広告社で浜崎社長の部下として働いていた。ある日得意先を招待し、茂雄の家で麻雀をすることになった。薬局の川井、ビリヤード屋の村岡が客である。浜崎の来るのが遅いので、朝子は電話をかけた。電話口からもれて来た声--彼女は例の不気味な声に余りにも酷似した彼の声に慄然とした。三年前の事件を報ずる新聞の、「質屋殺人事件、殺人現場から犯人の声、深夜、偶然に聞いた電話交換手」……などの見出しが甦って来た。

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