登場人物の心情とシンクロする名曲の数々ー『aftersun/アフターサン』監督が明かす“時代と感情を伝える”楽曲起用秘話。

(C)Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022
5月24日(水)

シャーロット・ウェルズ監督が初長編作品で英国アカデミー賞英国新人賞を受賞、世界のメディアが絶賛し本年度ベストムービーに選出した注目作『aftersun/アフターサン』より、本作を彩るクイーン&デヴィッド・ボウイ、ブラー、R.E.M.などといったヒットソングが、いかにして使用されるに至ったのか、シャーロット・ウェルズ監督に楽曲起用の秘話を訊いた。

11歳のソフィが父親とふたりきりで過ごした夏休みを、その20年後、父親と同じ年齢になった彼女の視点で綴る本作。2022年カンヌ国際映画祭・批評家週間での上映を皮切りに評判を呼び、話題作を次々と手掛けるスタジオA24が北米配給権を獲得。昨年末には複数の海外メディアが<ベストムービー>に挙げ、毎年映画ファンが注目するオバマ元大統領のお気に入り映画にも選出されるなど、本年度を代表する1本となった。その波はアワードシーズンを迎えてなおも押し寄せ、父親を演じたポール・メスカルがアカデミー賞(R)主演男優賞のノミネートを果たす。監督・脚本は、瑞々しい感性で長編デビューを飾った、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。ソフィ役には半年にわたるオーディションで800人の中から選ばれた新人フランキー・コリオ。愛情深くも繊細なカラムには、ドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが抜擢された。また、A24製作、第89回アカデミー賞(R)作品賞など3冠に輝いた『ムーンライト』のバリー・ジェンキンスが脚本に惚れこみ、プロデューサーに名乗りを上げている。


脚本を書いていた数年間、イメージした音楽のプレイリストを作り、曲を聴いてはその場所や瞬間にふさわしいと感じてどんどん楽曲が増えていったというウェルズ監督。そのうちの何曲かは実際に劇中で使用されている。「私が初めてカセットやCDを買ったのは1997年か1998年頃だったから、サウンドトラックに使う曲はその年代で区切りました。R.E.M.やブラーは父の影響です。ジャンルをミックスし、80年代かそれより古い曲も取り入れて、もう少し“クール”でインディっぽいものにしようとも考えましたが、場所とキャラクターに忠実でありたかったし、その直感のおかげで、ジャンルは様々でもまとまったサウンドトラックに仕上がったと思っています」と自身の自叙伝的な本作ならではの選曲方法を明かした。


本作で最も印象的な楽曲のひとつであるクイーン&デヴィッド・ボウイの『アンダー・プレッシャー』については、「あの選曲は本当に予想外でした。編集時にひらめいたんです。」と使用予定がなかったことを明かした。「フレディ・マーキュリーとデヴィッド・ボウイの歌声が素晴らしく、これまでもインスピレーションが欲しい時に聴いていました。だから今回も編集のときに聴いていたんですが、効果は覿面でした。」と当時を振り返る。しかしはじめは、「これだけ静かな作品なので、どうしても曲の歌詞に意識が向いてしまうのでないかと懸念していました」というが、仮で音源を入れて編集を進めているうちに徐々に“この楽曲しかない”という思いが強くなっていったのだと明かしている。結果的に、登場人物の語られない心の内と歌詞が共鳴し、最も重要な役割を果たす一曲に。監督自身があの曲でなければ成立しなかったと思える納得の選曲となった。ぜひ本編を観て、登場人物のエモーションに寄り添った楽曲の魅力も確認してほしい。

5/26(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国公開

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