イランの聖地マシュハドで2000年から2001年にかけて16人もの犠牲者を出し “スパイダー・キラー事件”と呼ばれたサイード・ハナイによる娼婦連続殺人事件に基づき描かれた『聖地には蜘蛛が巣を張る』より、衝撃の日本版予告編が解禁となった。
監督を務めたのは、第71回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でグランプリを受賞した『ボーダー 二つの世界』(18)(同年アカデミー賞🄬スウェーデン代表)で善と悪、美と醜など世の中のあらゆる“境界”の既成概念を揺さぶり、私たちに潜む差別や優劣意識を白日の下に晒して、映画界の注目を一気に集めた、北欧の鬼才アリ・アッバシ。

主人公の女性ジャーナリストを演じたのは、イラン出身で現在はパリ在住のザーラ・アミール・エブラヒミ。彼女は第三者による私的なセックステープの流出によってスキャンダルの被害者となり、2008年、国民的女優として成功を収めていたイランからフランスへの亡命を余儀なくされたが、本作での鬼気迫る演技が大きな話題となり、第75回カンヌ国際映画祭女優賞に輝いた。

今回解禁となった日本版予告編は、「俺の話をメモしろ。街中の娼婦を始末してやる」という新聞社に届いた犯行声明の声と、連続殺人犯“スパイダー・キラー”が次のターゲットを探すために夜の街をバイクで走る後ろ姿から始まる・・・。真相を追う女性ジャーナリスト・ラヒミは、「同じ手口で殺害」され多くの被害者が出ているにもかかわらず、犯人が捕まらない状況に、「誰かがかばっている」と疑いを持ち、「真相を暴く」ため周辺取材を進める。消極的な捜査の割には高圧的な警察のトップ。ラヒミの「犯人はイスラム法を実行してるとも」という問いに「聖職者は常に裏で何かを企んでると?」と相手にしない聖職者。街で生活をする主婦は「街の腐った女たちよ。殺されて当然」と蔑む。一方で、事件が起きても変わらず夜の街に立ち、挑発する娼婦たち。 そんな中、犯人は平然と街をバイクで走り、娼婦たちを狙っていく。
■『聖地には蜘蛛が巣を張る』予告編
次第にラヒミ自身にも「態度に気をつけたまえ、特に聖地マシュハドではな」という忠告や「この事件は忘れろ」と警察に迫られるなど不穏な影が迫るが、自分が囮(おとり)になり犯人を追いつめようとする。そんなラヒミの前についに犯人がー。「街を浄化するのだ」と殺人を続ける犯人と、「浄化しろ」と犯人を英雄視していく一部の市民。

追いつめられているのは、犯人か、それともラヒミか・・・。一線を越え、私たちが目撃するものは何か、本作への期待が高まる予告編となっている。 「連続殺人鬼の映画を作りたかったわけではない。私が作ろうと思ったのは、連続殺人鬼も同然の社会についての映画だった」と語るアリ・アッバシ監督が、私たち人間に潜在する狂気と恐怖を暴き出す衝撃作をお見逃しなく。


4月14日(金) 新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、TOHOシネマズシャンテ他全国順次公開