困難な状況の中であがく、名も無き人々の物語は魅力的だー『崖上のスパイ』チャン・イーモウ監督インタビュー到着!

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2月3日(金)

第94回米アカデミー賞国際長編映画賞中国代表に選ばれた巨匠チャン・イーモウ監督作『崖上(がいじょう)のスパイ』より、チャン・イーモウ監督が日本の観客に向けて語ったインタビューが到着。豪雪シーンの撮影メイキング写真2点&新場面写真も解禁された。

1934年冬の満州国ハルビンを舞台に、ソ連で特殊訓練を受けた男女4人のスパイ・チームが極秘作戦に命懸けで潜入するが、そのミッションは天敵である特務警察に察知されていた・・・。ヒッチコックの名作を彷彿とさせる列車内の攻防、ハルビン市街地や迷路のような路地での激烈なチェイス、銃撃戦といった息づまる見せ場が満載。スパイの信念と特務警察の威信をかけた騙し合いは、観客をも欺いて翻弄し、予測不能なスリルを楽しめる。美しい色彩に定評のあるチャン・イーモウ監督は、雪と闇に彩られた鮮烈な世界観を構築。心に染みる温かいヒューマニズムも吹き込まれ、多彩なジャンルに精通する巨匠の美学と技巧があらゆる細部にまで宿った。


到着したチャン・イーモウ監督のインタビューでは、「生き残ろうとする」「生きていく」というテーマが「多くのスパイ映画とは違う点だ」と語っています。初期の名作『紅いコーリャン』や『活きる』をはじめ、困難な状況の中であがく名も無き人々の物語を作ってきたチャン・イーモウ映画の真髄が、『崖上のスパイ』でも描かれていることが伝わるインタビューです。その他、キャスティング、豪雪シーン撮影へのこだわりに加えて、自身の監督作で最高の興行成績を収めたことを踏まえて現在の中国映画産業について考えること、さらに、本作に込めた敬愛する日本の俳優・高倉健さんへの想いを伝えるインタビューだ。

<以下、チャン・イーモウ監督オフィシャルインタビュー>
Q1.『崖上のスパイ』で伝えたかったことは何でしょうか?
チャン・イーモウ監督(以下、監督):
『崖上のスパイ』は、4人のスパイが飛行機から地上に降り立ち、敵の罠にはまるという物語です。主に語っているのは「生き残ろうとする」「生きていく」というテーマ。この視点が面白く、多くのスパイ映画とは違う点だと思います。私はこうした「困難な状況の中であがく」という無力感や運命的な感じが好きなのです。どんな時代も、名も無き人々の物語は魅力的です。他者を救うための自己犠牲は、いつも人を感動させます。

Q2.キャスティングで一番大事にしている点は?
監督:私が演技に対して一番に求めるのは「偽りがなく、自然である」ことです。新人俳優は現場での経験が少ないので、滲み出るぎこちなさや自然さをメラが捕らえた時、自然な演技だと観客に感じてもらえます。


Q3.この映画では終始雪が降っています。雪へのこだわりを教えてください。
監督:「ずっと雪が降っている」のは、「ずっと雨が降っている」よりも厄介です。まず、いい造雪機や雪を作るのに適した材料を探さなければいけませんでした。雪の材料は分解される環境に優しいもので、俳優の顔にかかっても害がなく、地面を汚染せず、数日で解けて自然環境を破壊しないものでないといけません。ウィンタースポーツの造雪設備と少し似ていますが、雪片はカメラで撮れるように大きく作る必要があります。


Q4.スパイ・チームを監視する特務警察のエースである周乙(ジョウ・イー)の孤高のたたずまいが高倉健さんに見えました。周乙(ジョウ・イー)は複雑な立場にありますが、演じたユー・ホーウェイと一緒にどのようにこのキャラクターを作り上げたのでしょう?
監督:若かりし頃のアイドルである高倉健さんとは『単騎、千里を走る。』でお仕事をご一緒したことがあります。私にとって生涯忘れられない経験で、今でも高倉健さんのことを懐かしく思い出します。1970年代から80年代にかけて、「高倉健」の3文字は、中国の芸能界において、ある種の演技スタイルの代名詞でした。周乙(ジョウ・イー)を演じたユー・ホーウェイも高倉健さんのことがとても好きで、彼と周乙(ジョウ・イー)という役の演技スタイルについて話し合っている時、図らずも、周乙(ジョウ・イー)という役柄には、見た目から演技まで高倉健さんの面影があると気づきました。孤独で、想いを内に秘め、感情を表に出さず、毅然としていて、落ち着いている。人を形容する中国の古い言葉に、「立てば松の如く、座すれば釣鐘の如く、歩けば風の如く、臥すれば弓の如く」という言い方がありますが、まさにこのようなタイプの男性のことでしょう。周乙(ジョウ・イー)に少しでも高倉健さんの面影を蘇らせることができたとすれば、それは私の高倉健さんを偲ぶ敬愛の念だと見なしてください。


Q5.本作は監督の作品の中で最大の興行成績を収めたと伺っています。チャン監督は中国の映画業界を牽引してきた存在ですが、今後の中国映画界におけるご自身の役割をどのように考えていますか?
監督:中国には若い監督が大勢いて、大ヒットする映画を撮り、興行収入でも大きな成績を収めています。これはいい現象です。コロナ禍後はなおさら、観客に映画館へ戻ってきてもらわなければ映画は発展し続けられません。私は商業性を拒絶したことはありません。中国の文化では、「雅俗共賞」(教養のある人も一般大衆も共に楽しめる)が芸術において最高の境地だと考えられています。作家主義的で個人的なアートフィルムももちろん必要ですが、映画産業という視点から言えば、マイナーなアートフィルムもメジャーな市場が支える必要がある。映画祭で上映されるだけで、映画館に見に行く人がいなければ、映画は生き残れませんからね。私がいつも考えているのは、次世代を担う若い監督は、マルチな能力を鍛えるべきです。マイナーな作品もメジャーな作品も撮れる人こそが名監督だと思います。たった1つの味わいでは満足できないのですから、排他的になってはいけない。中国では「百花斉放」(文化・芸術活動が自由かつ活発に行なわれること)という言葉がよく使われますが、私はずっと若い監督が大胆に新しいものを作っていくことを応援しています。


2/10(金)新宿ピカデリー、グランドシネマサンシャイン池袋他 全国公開

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