『余命10年』監督の藤井道人がプロデュースし、綾野剛主演のドラマ「アバランチ」では藤井と共に演出を担当した新鋭・山口健人監督が現代の日本の若者たちが抱える「病み」を鋭い視点で描く映画『生きててごめんなさい』より、映画『少女邂逅』(監督:枝優花)で初主演を務め、『街の上で』(監督:今泉力哉)などの話題作に出演し、アメリカのテレビシリーズ「SHOGUN」の放送が控えるなど、ヒロイン・莉奈役の、穂志もえかのオフィシャルインタビューが届いた。

出版社の編集部で働く園田修一(黒羽麻璃央)は清川莉奈(穂志もえか)と出逢い、同棲生活をしている。修一は小説家になるという夢を抱いていたが、日々の仕事に追われ、諦めかけていた。莉奈は何をやっても上手くいかず、いくつもアルバイトをクビになり、家で独り過ごすことが多かった。
ある日、修一は高校の先輩で大手出版社の編集者・相澤今日子(松井玲奈)と再会し、相澤の務める出版社の新人賞にエントリーすることになる。
一方、自身の出版社でも売れっ子コメンテーター西川洋一(安井順平)を担当することになるが、西川の編集担当に原稿をすべて書かせるやり方に戸惑う。修一は全く小説の執筆に時間がさけなくなり焦り始める。そんな中、莉奈はふとしたきっかけで西川の目に止まり、修一と共に出版社で働く事となる。西川も出版社の皆も莉奈をちやほやする光景に修一は嫉妬心が沸々と湧き、莉奈に対して態度が冷たくなっていく。いつしか、喧嘩が絶えなくなり―。
■『生きててごめんなさい』予告編
本作出演の経緯をお教えください。
オーディションで、掴んだ役です。いつも役に沿った服装を意識してオーディションに行くのですが、今回は莉奈が働いていない時のシーンがオーディションであったので、リアルな部屋着を着て行きました。
電車も?
はい。(笑)自分のできることは全部やったという気持ちで会場に入っていきました。
脚本を読んだ感想はいかがでしたか?
どこに行ってもおかしな目、辛い目に遭うという部分は共感できるところもありましたし、修一との世界しか知らないことがより莉奈を苦しめているということもすごく理解ができたので、リアルな想いを込めて実体験も踏まえてできる私がやるべきと強く思いました。

イン前に山口健人監督からはどのような話がありましたか?
何回も話し合いを重ね、擦り合わせていきました。その準備がとても丁寧にできたので、現場では莉奈としてカメラの前に立っていればいいだけという状態にすることができました。「メンヘラ」という4文字の言葉でレッテルを貼られていても、みんな状況が違うし、なんでそうなったかも違います。その子が悪いのではなくて、周りの環境によってそうなっている可能性もあり、監督はそういった人たちに寄り添っているんだと思いました。
彼氏・修一役の黒羽麻璃央さんとの共演はいかがでしたか?
黒羽さんはキラキラしたイメージがあったのですが、実際にお会いすると、すごく親しみやすくて、壁も作らず、いい距離感で撮影が続いたので、そういうところが、修一の憎めない部分として画面を通しても伝わると思いました。終盤のシーンでめちゃくちゃに崩れている姿が印象に残っています。そういった表情が見れ、「私が掻き乱すことができたのかな、影響を与えることができたのかな」と、一緒に作品を作っているのが感じられて、嬉しくもありました。

黒羽さんとの撮影の裏話もお教えください。
(対話している被写体を交互に)切り返して撮っている時など、気持ちをつなげないといけなかったシーンの撮影で、カットがかかった後も、ずっと号泣しながら黒羽さんに後ろから抱きついていました。そういったアプローチすらも受け入れてくれる方だったし、その後のカットでは彼に変化が出たように感じました。
莉奈がトイレに入ってから、修一が「ごめんね」と言うシーンでは、監督から「莉奈が納得するまで出てこなくていい」というお話がありました。映画では一瞬になっていますが、黒羽さんが色んなアプローチで「ごめんね」と言ってくれていたので、実はあのシーンは長い時間撮影していたんです。
泣くシーンが多かったですが、演じていかがでしたか?
大変でしたが、皆さんのサポートもあったので、楽しく演じさせていただきました。

山口健人監督の演出はいかがでしたか?
地団駄を踏むなどの独特な表現が盛り込まれた脚本でしたが、莉奈に関しては、「思い切り感情を出してほしい」という演出でした。私が新しいことを提案した時も、前向きに受け入れてくださることが多くて、みんながのびのびお芝居できる環境を作ってくださいました。
完成した映画を観て、撮影時の印象と違う部分はありましたか?
撮影中の体感としては、莉奈として受ける言葉が強かったので、もっとすごい気迫で言われている気分になっていましたが、完成した映画を観た時に、修一の表情に葛藤が見え、自分のエゴをぶつけているというよりかは、彼も彼で莉奈や自分の状況に対してどうしたらいいかわからないという気持ちが見えました。莉奈はベッドでゴロゴロしていたり、何もしていない描写も多かったので、莉奈を演じた私でさえ、修一が正しいのかもと思ってしまう瞬間がありました。私は撮影中ずっと莉奈の味方で莉奈として生きていたから気づかなかったけれど、全体を見ると、そう見えるのか!と思いました。

読者にメッセージをお願いします。
本作は、「同調圧力」「共依存」「メンヘラ」など、日本でホットワードになりつつある問題を扱っていて、それら全てに関して疑問を投げかけている作品になっていると思います。弱者を攻撃していないかと、一度自分を省みれるような作品でもあると思うので、皆さんの観た後の感想を楽しみにしています。

2月3日(金)よりシネ・リーブル池袋、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ほかにて全国順次公開