『名もなき歌』⼩島秀夫、橋⼝亮輔監督、シシド・カフカほか8名の絶賛コメントが到着︕監督からのビデオメッセージも!

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7月28日(水)

カンヌ国際映画祭2019監督週間で注目を集め、アカデミー賞2020では国際映画賞・ペルー代表に選ばれた新鋭メリーナ・レオン監督作品『名もなき歌』。公開を⽬前に控え、各界から8名のコメントが到着した。

ペルー出⾝の⼥性監督、メリーナ・レオンの⻑編デビュー作となったこの作品は、かつて新聞記者だったメリーナの⽗が追った、実際に起きた事件に基づいて作られた。2019年カンヌ映画祭・監督週間で注⽬を集め、以来世界⼗数ヶ国の映画祭において作品賞他32部⾨で受賞。2020年アカデミー賞・国際⻑編映画部⾨ではペルー代表に選ばれ、ノミネートは逸したものの、その抑制を利かせた演出スタイル、モノクロ×スタンダードの画⾯に際⽴つヴィジュアル・センスは、新たな才能の誕⽣を実感させる。


⾚ん坊を奪われた⺟親の悲哀と絶望、そして、孤独な新聞記者が内に秘めた苦悩と使命感を描いたこの作品は、貧困と格差、⼈⾝売買、⺠族差別とジェンダー差別、全体主義とテロリズムといった社会問題をも浮き彫りにし、それらが今の時代においても何ら変わっていないことを静かに提⽰してみせた野⼼作だ。

ゲームクリエイターの⼩島秀夫は「モノクロのTVサイズに抑制された映像で、貧困と混乱、絶望が現実であることを思い知らされる」、橋⼝亮輔監督は「新⼈監督の⼀作⽬は、世界に向けた最初の息吹き。全てのカットに監督の確信を感じて勇気をもらうようだった」、ドラムボーカリスト・⼥優のシシド・カフカさんは「終始フォトジェニックな世界観」などそれぞれの語り⼝で本作を絶賛のコメントを寄せている。

以下、コメント全文

◆小島秀夫(ゲームクリエイター)
誰も抗えない、声をあげられない、耳を傾けない。ただ弱者は押し黙り、歌うしかない。モノクロのTVサイズに抑制された映像で、貧困と混乱、絶望が現実であることを思い知らされる。“名もなき⼦守歌”を聴きながら、ラストで感じる無力感が決して⽿から離れない。

◆兒島峰(神奈川⼤学准教授ラテンアメリカ研究)
疎外された先住⺠。公的⾝分証明書がないため、そこに「いる」のに「いない」とされるが、このような「いない」とされる貧しい⼈たちを通じて儲けるのは、公職に就く裕福な⼈たちだ。当時のペルーの通貨はインティ。先住⺠⾔語で太陽を意味する。そして、作品冒頭に登場するハサミ踊りは、2010年にユネスコ無形⽂化遺産に登録された。先住⺠は、奪われるときだけ、そこに「いる」ものとして包摂される。

◆児⽟美⽉(映画執筆家)
キュアロン『ROMA /ローマ』の圧倒される美しさ、ディアス『⽴ち去った⼥』の⾼尚な静謐さ、あるいはイーストウッド『チェンジリング』の不条理な恐ろしさを想起させる『名もなき歌』。⾊を失った⽩⿊の世界は、無数の希望が灼けつきた灰塵に⾒える。そんな世界のなかで、悲劇に⾒舞われた⼥とセクシュアリティを抑圧される男が⼿を取り合う。⼥性の新⼈映画作家が紡ぐこの抒情詩を⾒逃してしまうのは、あまりに惜しい。

◆シシド・カフカ(ドラムボーカリスト・⼥優)
終始フォトジェニックな世界観画⾓も⾊彩も限定されている中で、登場⼈物の時に激しく時に静かに揺れる⼼情が痛いほど真っ直ぐに伝わってくる

◆橋⼝亮輔(映画監督)
寓話であり、神話であり、悪夢のようである。美しいは残酷。残酷は美しい。⽩⿊の映像がまるで冷たいメスのように⼼を裂いてくる。まだ明けない朝、窓を開け放ち、冷たい⼤気を吸い込んで宙に向かって息を吐く。新⼈監督の⼀作⽬は、世界に向けた最初の息吹き。全てのカットに監督の確信を感じて勇気をもらうようだった。

◆細⾕広美(⽂化⼈類学者成蹊⼤学教授)
過去を呼び起こすモノクロームの映像美。盗まれた我が⼦を探す20才の先住⺠⼥性ヘオルヒナのひたむきな姿。彼⼥を⽀援するゲイの新聞記者。過酷な現実の中で⼈々が優しさと共感⼒でつながっていく。⼈種差別、格差、ジェンダー、多様なリアリティが交差する世界を描きだした監督の⼒量に脱帽

◆町⼭智浩(映画評論家)
実際に起きたペルー先住⺠の嬰児誘拐事件をモノクロ・スタンダードで描き、ブニュエルの『糧なき⼟地』の崇⾼さに達する。世界のどこかにいる我が⼦のため⺟が歌う⼦守歌がアンデスの⼭に響き、観る者の胸を締めつける。

◆真鍋祐⼦(東京⼤学教授)
「名もなき歌」とは沈黙によって表現される哀歌である。先住⺠のヒロインは⼦を奪われた悲嘆を⾔葉では⼀切語らない。彼⼥に寄り添い、道⾏きをともにする記者もまたゲイとよばれる少数者だ。それぞれ苦しみを抱えた少数者どうしが「名もなき歌」に共振する時、この世の不条理に対峙する連帯のかたちが仄⾒える。それは腐敗しきった世界に対して、「別の視点から考えろ」という欺瞞を拒み、悲しむ者の側に⽴つ静かな闘いである。

また、ペルー在住のメリーナ・レオン監督から⽇本の観客に向けてのビデオメッセージも到着。本作『名もなき歌』に込めたメッセージや、溝⼝健⼆、⼩津安⼆郎、⿊澤明、そして河瀬直美監督など、これまで影響を受けた⽇本の映画監督について語られている。

『名もなき歌』監督ビデオメッセージ

7月31日(土)東京・ユーロスペースほか全国順次公開

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作品紹介

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